室内楽講座第1回 クラリネット五重奏について
クラリネット五重奏曲は、クラリネットと弦楽四重奏による室内楽である。(クロンマーの様に、Vl.-1,Va.-2,Vc.-1とクラリネットという変則的な曲もあるが)有名なモーツアルト、ブラームスに加えウエーバー、レーガーの曲が、4大作品であると思われる。管楽器を含む室内楽曲の中では最も作品の数が多いものの一つで、出版されているものだけで20以上にのぼる。これは勿論、モーツアルトやブラームスの作品に触発されたという理由もあろうが、その響きに魅力を感じた作曲家が多かった為ではなかろうか。又不思議なことに、多くの作曲家がその晩年にクラリネット五重奏を書いている。これもその響きに何か哀愁に満ちたロマン性を見い出した為ではないかと私は思っている。元来クラリネットは柔らかい音色を特色とする素朴な性格の楽器なので、管楽器のアンサンブル等では伴奏、音色のつなぎに使われる事が多く、少なくとも余り華々しい存在とはいえない。しかし弦楽四重奏と供に演奏すると、その音色が最大限に発揮される。私の恩師である故 千葉 国夫先生は口癖のように「弦楽器の中から聞こえるクラリネットが一番美しい」と言われていた。音色をコントロールする事が比較的容易であるのも繊細な弦楽器との相性を良くしている。このような優れた表現能力を持った室内楽曲であるので、これからの作曲家達にも是非多くの作品を作曲してもらいたい。
