室内楽講座第2回  五重奏曲ト長調 サー、アーサー、サマヴェル

Quintet inG  Sir Arthur Somervell

<作曲者について>

アーサー.サマヴェル(1863ー1937)はイギリスの作曲家、教育家である。アピンガム校、キングス カレッジ、ケンブリッジ大学(スタンフォードに師事)で学んだ後、ベルリン音楽大学に2年間留学。(1883〜85)さらにロイヤル音楽カレッジで数年パリーに学び、その後彼の内弟子になった。1894年にロイヤル音楽カレッジの教員になり、1901年に教育委員会の音楽監査官に任命され、1928年にその職を退いて翌年ナイトの称号を受けた。作品は多岐にわたっているが、教育者だった為にアマチュアでも歌えるような合唱曲を多く書いている。

<作曲年>

1913年

<出版社>

EMERSON EDITION

<作品解説>

1楽章 6/8拍子 ト短調〜ト長調 ソステヌート〜アレグレット(クワジ アンダンテ)グラッツイオーソ 

最初はト短調で弦のみにより悲劇的に始まる。クラリネットはピアノで暗い色彩を添えて入って来る。主部は速度をやや速めてト長調になり暖かい第一主題をクラリネットが奏する。第二主題はヴィオラに表れる軽いもの、それからからみ合い最後は静かに終わる。(Cl inA)

2楽章 3/4拍子 変ロ長調 アレグレット〜ポコ メノ モッソ〜アレグレット

クラリネットによる楽し気な主題で始まる。途中変ロ短調に転調するが全体にはのどかな感じをもっている。中間部は弦楽器の農民風舞曲。又最初に戻る。(Cl inB)

3楽章 2/4拍子 二短調 ラメント(アダージョ ノン トロッポ)

弦楽器の前奏に続きクラリネットが悲し気なカデンツを奏し、単純だが感動的な主題を奏する。それをヴィオラが引きつぎ歌い続けてゆく。中間部で二長調に転調するのが美しい。そして又二短調に戻り曲を閉じる。(Cl inB)

4楽章 2/4拍子 ト長調 フィナーレ(アレグロ ヴィバーチェ)

クラリネットが軽快な主題を奏して始まる。2番目の主題はヴァイオリンに表れる柔らかいもの。それらがからみ合って進むが曲の最後でテンポを落として1楽章が回想されアレグロ モルトで曲を閉じる。(Cl inA)

<<奏者の呟き>>

民謡の宝庫であるイギリスの作曲家らしく、メロデイーが美しい。私はもっと知られてもよい佳品だと思う。クラリネットのテクニックも難しくなく音大生やアマチュアの奏者でも取り上げることが可能である。弦はやや難しい。しかし練習によってアンサンブルの楽しみを充分味わう事が出来るだろう。難点はややクラリネットの扱いが単調で音域もさほど広くない事だが、教育者と言う事を考えると、そういうアマチュアの為に書いたと言う事も考えられる。五重奏としては1、4楽章がA管で2、3楽章がB管というのも珍しい。これは調子を3度つつ上げていった為だろうか。いずれにせよ全体を通して感じられる暖かさは素晴らしい。

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